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「ところでジャンさん達はなぜ遥町を本拠地にしたんですか?」
僕はふと感じた疑問を口にした。
こう言っては何だがのどかで小さなこの町と宇宙レベルの地球保護と言う壮大な目的が余りにもミスマッチに思えたのだ。
「それはもちろん・・・。」
そう言いかけたジャンさんの体が急に白く光り出し、見る見る間に大きくなった。
そしてその光が消え失せた後に机の上に立っていたのは青いツナギを着たあの男だった。
「この町が気に入ったからに決まってんだろ。」
「こ、耕作さん?何で!?」
と言いつつ振り向くと、立たされていたはずの彼はやはりいなかった。
「俺はなぁ、初めて視察に来てこの遥町に一目惚れしたんだ。太陽から降り注ぐ自然光、青々とした作物、それを育てる土と地球人達・・・本当にキレイで涙が出そうだった。地表が死んだエリシアでは永遠に見られない景色だからな。俺も一緒に作物を育ててみたくなって、仲間達も同じ意見だったからここを本拠地にした。名前だってさ、この農業って言うすっげー仕事に敬意を表して“田畑 耕作”にしたんだぜ!」
耕作さんは得意そうに胸を張った。
なるほど、そう言うことだったのか。
よく考えてみれば確かにでき過ぎた名前だ。
僕がそう思った次の瞬間、耕作さんがまた光に包まれてジャンさんに戻った。
「失礼、耕作が我慢しきれずに出てきてしまった。私が擬人化した姿が彼だ。ついでにもうひとつ。」
再びジャンさんの体が光り、今度は体長20センチほどになった。
こうなると二足歩行であることを除けばまさにデグーそのものだ。
「生命力が低下するとエネルギー消費を抑える為に小さくなれる。言ってみれば省エネ用の体だ。」
基本の大きさになったジャンさんは「私からの説明は以上だ。あとは柊に任せよう。」と話を締めくくった。
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