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「驚くような話ばかりだったと思うが椎名くんに伝えておきたいことはこれで全部だ。かなり特殊な環境ではあることを黙っていて申し訳なかった。これらの話を踏まえた上でここで働くことに問題はないかい?」
結城さんは最終的な僕の意思を確認した。
同時に藤代さんと風見さんが僕をじっと見つめた。
ちなみに所長は眠気を堪え切れなくなった子どものように座ったまま夢の中だ。
こんな話を誰にでもそうそうできるわけがないから結城さんの立場はものすごく理解できた。
だからそんな風に謝られて恐縮してしまったのと、自分が秘密を打ち明けるに相応しいと認められた喜びで言葉が詰まり、僕は不覚にもその問いかけに即答することができなかった。
それをためらっていると受け取ったのだろう、結城さんは僕を気遣うように付け足した。
「もちろん僕達は君と一緒に仕事ができたらと思っている。しかしどうするかは君の自由だよ。ここで知り得た事実は口外しないと言う守秘義務は負ってもらうけど、無理はしなくていいんだ。」
「まぁ、話したところで誰も信じちゃくれないだろうけどな。」
藤代さんがニヤリとした。
「違います!大丈夫です!僕は何があってもここで働きたい、いや、ここ以外では働きたくないです!絶対にここで働かせて下さいっ!!」
誤解を解くべく僕が全力で訴えると結城さんはふっと表情を緩めた。
「よかった。君なら絶対にそう言ってくれると思ってたよ。なぜなら椎名くんと僕達はとてもよく似ているから。」
「似ている?」
「そう、ここにいるみんなはね、今迄当たり前だと思っていた流れの中で少しだけ歩みを止めて、自分の足元や周囲の状況を確かめようとしている人の集まり・・・言ってみれば立ち止まりたくなった組だ。そして椎名くん、君もそうなんじゃないかな?」
「僕が・・・?」
「ああ。面接で話をした時から僕はそう思っていたんだ。」
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