I .彼方の森天文台 概要

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道都・札幌から車で東へ約4時間、帯広からなら北見方面へ2時間弱、肥沃な十勝平野の北東部に位置する小さな町、それが遥町だ。 人口およそ2500人、農業・酪農・林業が盛んで、冬になると気温がマイナス30度を下回ることもあり“日本一寒い町”として時々全国ニュースに名前が上がる。 そんなわけで昔は厳寒期になると寒さの余り町全体がどこか閉ざされた雰囲気になったらしいが、三十余年前から(しば)れを逆手に取ったイベントを開催するようになって以来、冬にも多くの観光客が訪れるようになった。 年々その規模が大きくなるにつれ企画や準備の時期も早まり、最近では実行委員会が夏頃から始動する為、休耕期を迎えても町の活気が失われることはなくなったという話だ。 僕、椎名 航平・28歳が勤務する彼方の森天文台はそんな遥町の中心部にあるこじんまりとした商店街から南へ徒歩20分ほどの小高い丘の上に建っている。 青々とした林の上に顔を出した大きな白いドームが目印だ。
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