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「・・・多分、そうなんだと思います。だからこの天文台の一員になれてとても嬉しいです。」
僕はずっと探していた宝物を見つけたような晴れやかな気分になった。
「いつまでそう言っていられっかな。正職員になったら今まで以上にこき使われるぜぇ?」
すかさず藤代さんがいつもの調子で毒を吐いた。
風見さんの苦笑いからそれがただの脅かしではないことが読み取れた。
結城さんは少し気まずそうにゴホンと小さな咳払いをした。
「藤代くん、確かに君や風見さんには相当苦労をかけてるけど、椎名くんの気が変わったら困るからここではあまり暴露しないでほしいな。」
「へーい。俺が言わなくたってすぐに身を以て知ることになりますもんね。」
もう一度チクリと言って、藤代さんはニンマリと笑った。
今度は結城さんがとても心苦しそうな面持ちになり、そんな彼を見て風見さんがクスッと笑った。
どうやら正職員の忙しさは想像以上のようだ。
でも先輩達の間に漂うこの暖かな空気感の中なら何とかやっていけそうな気がした。
「それでは改めて。椎名くん、これからは通常の業務と合わせてジャン達の手伝いを頼むこともあるかもしれない。はっきり言って多忙だし胸踊るようなドラマティックな展開もないけど挫けずに頑張ってもらえると有難いです。どうぞよろしくお願いします。」
結城さんの口調からはこの先僕にもかなり大変な思いをさせることへの謝罪がうかがわれ、ジャンさんも「よろしく頼む。」と心から頭を下げてくれた。
「はい、こちらこそよろしくお願いします!!」
一体、どんな未来が待ち受けているのやら。
多少の心配を抱きながらも、気づけば僕は自分でも恥ずかしくなるくらい希望に満ちた明るい声で答えていた。
「それにしてもよ、どう考えてもアイツよりジャンの方が知的で威厳があるよな。ずっとその姿でいりゃいいのに。」
僕の入社が正式に決定したところで、藤代さんが頬杖をつきながら真顔で言った。
風見さんも「同感です。」と大きく頷いた。
「そうするのがみんなの為だとわかってはいる。しかしこの姿で地球上で生活するのは難しい。もう少し耕作を制御できるといいのだがアイツは私の手にも負えないのだ。」
ジャンさんは腕組をしたまま苦悩と申し訳なさに溜息をついた。
基本形の彼ですらコントロール不能とは・・・恐るべし、耕作さん。
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