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彼方の森天文台の代表は所長の水森 隆之助博士、68歳。
いかつい名前に似合わず身長150センチ半ばと小柄でころんとした丸っこい体型をしており、ちょこんと鼻に乗せたメガネと口髭がトレードマーク。
人柄は極めて温厚で、ふと気づくと外の林を散歩していたり、ルーフテラスで望遠鏡を覗いていたり、所長室で宇宙の本を読んでいたり、時にはそのままコックリコックリと船を漕いでいたり。
まるで子熊みたいに可愛い所長はこの天文台のマスコットのような存在なのだが、その実体は天文学界では知らない人がいないほどすごいお方だ。
若かりし頃は世界中の天文台を股にかけ宇宙の謎の解明に尽力し、その合間を縫って各国の大学を巡り研究で培った経験と知識を学生へ伝える為に教鞭をとった。
15年前から7年間は札幌の大学の大学院、理学院宇宙理学専攻の研究室、そこは僕の母校でもあるのだが、そこで後進の育成に努めた。
60歳を迎え退官後はすぐに遥町に移り住み、7年前に彼方の森天文台が完成すると同時に所長に就任し現在に至る。
ちなみに“遥町”と冠してはいるがこの天文台は公的なものではなく、多くの企業の出資により建設・運営されている。
それは所長となるのが水森博士だからこそ実現した壮大なプロジェクトであり、そのお陰で我々研究兼技術スタッフ4名は天文台の業務の傍らで好きな研究に没頭できると言うわけだ。
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