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時刻は11時30分。
未だ誰もいないスタッフルームで僕は自席に座り頭を抱えていた。
机の上には一冊のノートがあり、開いたページは罫線が引かれているだけで真っ白だ。
その白さが余計に僕を焦らせる。
「おはよーっす。」
「おはよう。」
セキュリティを解除して、いつも通りの挨拶と共に入ってきたのは藤代 和志と風見 理世。
まず藤代さんだが。
恐らく年齢は30代半ばで、ここでは僕より4年先輩。
・・・超怖そう。
初出勤の日、僕が藤代さんに抱いた第一印象はこのひと言に尽きる。
なんせ185センチの長身に眼光鋭く、着任の挨拶をする僕を眉間にシワを寄せて睨むように見つめていたのだ。
ここでの生活に暗雲立ち込める思いだったが、翌日、それは誤解だと判明した。
単にコンタクトをつけ忘れて出勤し、それでもなんとか僕の顔を見ようと目を凝らしていただけの話だった。
それにその背の高さ故に頭を下げないとドアをくぐれず、よくスタッフルームの出入口に頭をぶつけて悶絶し、みんなに笑いまで提供してくれる。
時に毒を吐いたりバイオレンスな一面を垣間見ることもあるが、その実体は男気に満ちた面倒見のよい人なのだ。
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