狐の嫁入り

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 妖狐の中でも王と玉という存在は特別で約半世紀毎に一組誕生する妖狐達だ。顔が他の妖狐と異なる為、産まれてすぐに分かるという。  そして代々その二人で番い、また死ぬ頃に次の王と玉が産まれた。例外はあったが。  王は長身だが女性に見えるくらい綺麗な顔立ちをしている。少し釣り上がった目元がキツネのようだった。線は細いが着物を脱げば無駄のないしなやかな筋肉がついていると分かる。白っぽい耳と尾が風になびいている。 「私はあまり興味ない」  玉は眠そうな目を擦って言った。背丈はあまり高くないが、小さな顔が全体のバランスを取っている為、小柄に見えない。他の妖狐と違い、口は小さく、大きな目をしていた。 「おい、あれ見ろよ。おっきな鳥だ。御神木の周りを飛んでるぞ」  珍しい鳥に気を取られた王は会話を遮って言った。それもそのはず、神木としているとても大きな大樹が村の中心にあるのだが、それが結界となり人間界から村を隠していた。その結界が在る為、恐らくその大きな鳥は入ってこられずに焼けて落ちるだろう。神木の高さは木としては巨大であり、その頭上を飛べる鳥はあまりいない。その為、滅多にないことなので吉兆の表れとして伝えられていた。 「今日の花嫁は運がいい」     
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