第二説 口裂け女

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 こうして新しい住民『口裂け女』が桜ハイツに加わる――だが。  その空気をぶち壊すかのように、メリーさんのスマートフォンが鳴った。  何とか死に物狂いでその場から脱出したメリーさんはスマートフォンのロックを解除し、その通知を見た。 「あ、くねくねからだ」  その一言――たった一言で、口裂けの様子が一変した。 「……くねくね、いつから来るって?」 「『三週間後の水曜日にはそちらに到着します』だって」 「タイミング悪すぎるわ、くねくねぇ……」  空気の読めないくねくねに対し。  大家は同情が半分と、呆れが半分ずつその身体の中に渦巻いていた。  後者は言うまでもないことだが、前者に関しては。  くねくねが、まさかここに因縁の相手『口裂け女』が入居しているとは知らない。  あと三週間後にはくねくねは物理的に死んでしまいそうだ。 「――ま、いっか。別にアタシの問題じゃないし」  しかし非情な大家は。  あっさりとくねくねを見捨てることにした。
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