プロローグ

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 とある女子学生がコックリさんをやっていた最中にあまりの恐怖で指を離してしまったことがある。  しかしコックリさんは『降霊術』だ。途中で止めることは許されない。  その女子学生は指を離した瞬間、何故かこう思ったと言う。 「川に……川に……」――と。  女子学生は急にその十円玉を持って近くの川にまで走って行き、その後を仲間が追いかけた。  だがそこから――コックリさんの恐怖は始まる。  川に近づいた女子学生は、突然十円玉を握りしめている腕を何者かに引っ張られる感覚に襲われ、川に引きずり込まれようとしていた。  それを見ていた仲間達が慌ててその女子生徒を引き戻そうと試みるが、引っ張られる力の方が大きいのか、ドンドン川に近づいていく。  そして、またもや奇妙なことが起こった。 「熱い、熱い! 十円玉が熱い!」  女子学生が握りしめている十円玉が突然燃えるように熱いと叫び始めたのだ。  しかし握りしめている拳は彼女の意思と関係なく、十円玉を握りしめ続ける。  何のことか分からない仲間であったが、一人の仲間がその女子学生の拳から無理矢理十円玉を引きはがし、そして川に投げ捨てた。  そうすると、女子学生を引っ張っていた謎の力は途端に力を失ったかのように消え失せて。  引きずられた女子学生は安心した――が、それは束の間だった。  十円玉を川に投げ捨てた仲間の一人がその女子生徒にこう言ったのだ。 「あの十円玉……全然熱くなかったよ……」  その女子学生達はあまりの恐怖でその場から動くことすら出来なくなった……と言う話だ。  何故十円玉が熱いと感じたのか。  何故川に行こうとしたのか。  その答えは簡単だ。 “降りてきた霊の恨みによるもの”であるからだ。
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