犬系男子

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犬系男子

「先輩! 待ってください! 朝比奈先輩!」 「……もう遅いのよ、仁藤君。早くしないと、打ち合わせに遅れるでしょ?」 立ち止まって振り返ると、 「だって、まだ約束の時間には10分もあるじゃないですか」 言いながら腕時計を覗く私の部下ーー仁藤 悠哉(にとう ゆうや)をやや呆れ顔で見つめる。 「…あのね、仁藤君。クライアント先に着くのは5分前が鉄則。時間ぴったりに行けばいいってもんじゃないのよ?」 「…えっ? そうなんですか?」 睫毛をしばたいて首を傾げるのに、ため息が漏れる。 「……時間通りに行けばいいと思ってました。違うんですか?」 臆面もなくそんなことを言ってのける彼に、我が部下のことながら頭が痛くもなる。 まだ少し教育が足りないかのなと……「そんな悠長にしてたらダメなの。仕事はスピーディに無駄なくって、毎回言ってるでしょ?」ちょっと咎めるような口調になる。
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