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退社時刻が訪れて、仁藤君が席を立って帰るのをぼんやりと見送る。
終わらない仕事を片付けている内に、ランチでの彼との約束を忘れて、つい遅くまで居残っていた。
……と、
もう数えるほどしか人はいなくて、同じ部内には誰も社員が残ってはいない中、
「……朝比奈先輩……」
帰ったはずの彼が、デスクに近づいてきた。
「…あ、」
と、約束をすっかり忘れていたことを思い出す。
「……ごめんなさい。忘れてた…」
口にすると、
「……酷いです。ずっと、待ってたのに」
言われて、見上げれば、その顔は涙目になっていて、
「ああ…ごめんて。そんな顔しないでよ」
と、とっさに謝る。
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