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オルゴールは床に叩きつけられた。
大きな音がして、粉々になって飛び散った。中から、手のひらに収まるほどの白い石の塊が現れる。想像していたより小さい塊であったが、アウレスはそれを拾い上げて、持っていたキーストーンをかざした。
白い塊の石が白く光る。光の結晶である証だ。
「これはいただいていく。夜分に失礼したね」
満足そうに言い放ち、アウレスは家を出た。
ポーチの階段を下りると、ヌヌハラが叫んだ。
「止まれ! それを返せ」
カチャリと、銃の引き金を引く音がした。
アウレスはゆっくりと振り返った。
ヌヌハラが、玄関口で猟銃を構えていた。
「あなたも銃を使うとは、知りませんでしたよ」
丁寧な言葉とは裏腹に、アウレスは鋭くヌヌハラを睨んだ。
外で待機していた兵たちが、一斉に銃を構える。
犬が吠え、アーニャも寝間着姿で顔を出した。事態の深刻さを見てとって、怯えて戸口に隠れた。
アウレスは兵たちに銃を下げるように手を振った。
そして一歩前へ進み出る。
「どうしたのです? 撃たないのですか? 光の結晶は返しませんよ」
ヌヌハラは黙って銃を構えていた。その手は力み過ぎて、固まっていた。
それを知りつつも、アウレスは再び煽り立てた。
「やれるものなら、やってみろ!」
「わしには、人は撃てん……」
観念したかのように、ヌヌハラは銃を下げた。
入れ替わりにアウレスが腰の銃を抜き、腕を前へ伸ばした。
「銃は、こう使うのだ!」
銃声が辺りに響いた。
ヌヌハラは声もなく背後に倒れ込んだ。アーニャが悲鳴を上げて駆け寄る。
「首長! 首長! ああ、どうしましょう……! 誰か、助けて!」
犬の吠える声とアーニャの喚き叫ぶ声を聞きながら、アウレスは兵を連れてその場を離れた。
彼は怒りで震える手をきつく握った。宙を睨みながら、自分に言い聞かせる。
――残りの結晶を必ず見つけて手に入れる、と。
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