気付いた時には

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 動揺した心を少し落ち着かせ、大学へと向かったがその日鍋島は大学にやってこなかった。  午前中はいつ来るのかとそわそわしていたが、午後になるころには今頃もまだあの裸の男と一緒にいるかと思ったら苛立ちも感じ、このまま家に突撃でもしてやろうかという気分にもなった。  だが事実を明らかにしてしまってはこの発覚した気持ちに名前を付ける前に鍋島とこじれることは分かっていたので、何とかと自身を留まらせその日の講義を全て受講したのだった。、  鍋島が智也の家を訪ねることはそうそうなかったが、今は会う前に自身の気持ちの整理をしたかった智也は匿ってくれそうな人間を探しに馴染みのバーに顔を出すことにした。  以前のバイト先の近くにあるそのバーは、実はマイナーな嗜好を持つ人間が出会いの場として使うバーでもあった。  最初は普通に酒を飲むつもりで入店していたが、回数を重ねれば智也自身もそこを出会い目的のバーとして使用していた。  今日だって顔馴染みがいればそのままこの鬱々とした気持ちを解消してもらおうと思い、いなければ新しい男を見つければいいと思いカウンターに腰を下ろす。 「久々ですね智也さん」 「こんばんはマスター。誰か見つけるまでここに座っててもいい?」 「ええ勿論」  腰ほどまでにある髪を一つにゆるく結んだこの店のマスターは智也にあいさつを済ませるとまた奥に戻っていった。  いつの間にか来店すると決まって頼むカクテルがそばに置いており、マスターのスマートな接客に頬も緩む。 「男漁りか?」 「…………もっとオブラートに包んでくれない?せっかくいい気分だったのに」 「男性のお求めですか?」 「そういう意味じゃないんだけど……ってかわかってんなら茶化すのやめてくれない静雄さん」  智也の横に腰を下ろした静雄と呼ばれた男は智也よりも二十は上であろう、落ち着いた雰囲気の青年だった。 「お前がここに来るのはそういうときだろ?相手決まってないならどうだ?」  静雄はグラスを握る智也の手に自らの手を重ねると緩く指を絡ませる。  その刺激で静雄に与えられた甘い快楽を思い出した智也は小さく息を吐いた。
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