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「今日はふざけないで俺の悩みを聞いて、俺のことをぐずぐずに甘やかしてくれる人がいいから静雄さんとはしない」
「そういうのがお好みならその通りにやってやるが?」
「静雄さんとすると頭が意味分からなくなるんだよ。それの事しか考えられなくなる」
言いながらその時の感覚を思い出してしまった智也は振り切るように重ねていた手を外すと、残り少なくなったカクテルと一気にあおった。
「ならまずは頭の中空っぽにしようぜ。空っぽにしたらお前が悩んでることとか、ぐずぐずに甘やかすこととかやってやるからよ」
「っ、ムカつく」
恐らく静雄に見つかった時から今日は静雄と共になることになると智也は心のどこかで分かっていた。
年の功がそうさせるのかこの店で関係を持った男たちの中で静雄以上に智也を楽にさせてくれる者はいなかった。
「マスター会計。こいつの分もな」
マスターを呼びチェックを済ませ支払いが終わると静雄は智也の手を引きバーを後にした。
このままホテルに行くのかと思っていた智也は静雄が一台のタクシーを止めると聞きなれない住所を伝えたことに驚く。
「どこ行くの?」
「俺の家」
「……まじっすか?」
「今日はとことん智也を甘やかすって決めたからな。だったら家の方が都合がいい。少し時間かかるから寝ておけ。どうせ着いたら寝かせることなんて出来ないんだ」
自分のことをちゃんと考えて特別扱いしてくれる静雄にどこか心が躍りながら、彼の助言通りに短い仮眠をとることにした智也だった。
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