気付いた時には

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「智也、そろそろ家帰れ」 「いいじゃん。静雄さん家広いんだもん。俺一人くらい置いてくれよ」 「別に家にいる分には構わん。だがお前大学もサボってるだろう。学費を出してくれているのは親御さんなんだから親御さんの善意を無下にするのはやめなさい」 「うわー!一気に静雄さんが年より臭くなった」 「その年寄りに昨日もボロボロに抱き潰されているくせに、口が減らないガキだなぁ」  静雄の言っていることは間違っていなくて、智也もこのままではいけないことなどちゃんとわかっていた。  だが家にいてはいつ鍋島が来るだろうか、大学で声をかけられたらどう対応すればいいかがまだ分からない智也は今日も静雄の家で一日中ゴロゴロと過ごしていた。  この部屋に閉じこもるのも三日目になったので、痺れを切らした静雄が声をかけてきたのだろう。 「風呂は昨日入ったよな?服はうん、今着ているので大丈夫だ。ほら、さっさと学生は勉強してこい」  ソファで横になっていた智也を抱え上げると、玄関に向かって静雄は歩き出す。  その途中智也の少ない私物が入っているカバンも拾うと文字通り玄関先に智也を頬り投げた。 「ちょ!静雄さん!!!」 「大学にちゃんと行ったら今日も泊めてやる。さっさと行けガキが」  バタンと冷たく閉ざされた扉を何度も叩いたが、扉が開く気配はなかった。  完璧すぎる防音のおかげで中の様子をうかがう事すらできない。 「畜生……」
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