気付いた時には

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「俺はどうすればいい?責任を取ればいいか?」 「今更責任とか言われても困る。鍋島とのSEXも気持ち良いけど、キスはもっと上手な人が居るし、サイズがもっと太い人もいる。その人たちともう寝れなくなるのは俺は耐えられない」 「だよな。俺もお前だけとか今更無理だ。……でもこれでお前との関係を終わらせるつもりもない。きっと妻になる女とは子供が出来たりして、だんだんとそういう機会も減っていくんだろう。だがお前とは体が反応するまではずっとヤってたいなって思う」  鍋島は最低な事を口にしていると理解しているのに、そんな言葉を貰えて嬉しいと思う智也がいた。  家族になる女性とは情で関係を続けるが、智也とは自分の意志で関係を続けるという事だろう。 「智也とこれを機に別れるってのはどう頑張っても考えられないんだ。ごめんな」 「俺も一緒。他の人とならもう寝れなくなってもいいけど、鍋島と寝られなくなるのは嫌だ」 「だったら俺もお前も互いを選べばいいのにな。……そうなるには少し遅すぎたらしい」 「選べないけど捨てることもできない所も同じなんて、本当に俺らは気が合うよなぁ」  きっと関係を持ち始めた頃に気づけたのなら、今と違う未来になっていたのだろう。  だがその時鍋島に対し今と同じ想いを持っていたかと聞かれたら、きっと違うと智也は答えるだろう。  この複雑な感情は関係を持ってから互いに着々と育ち、絡み合いながら大きくなり解けなくなってしまった。  一人でも生きていられるが、絡み合った感情は持ち主たちにももう戻すことは出来ないのだろう。 「智也が好きだ。多分俺の人生の中で一番愛している存在だ。でもお前を一番には愛せない」 「俺だって鍋島が好きだよ。鍋島以上に愛せる存在はいないと思う。でも鍋島一人だけを愛せない」  互いに見つめあいながら想いを伝えるが、自分たちの言葉のちぐはぐさにおかしくなって二人で腹を抱えて笑いあった。  一番愛している存在だが、一番に愛せない鍋島。  鍋島以上は存在しないというのに、一人だけを愛せない智也。
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