気付いた時には

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 鍋島と初めて体を重ねてから三年が経とうとしていた。  この3年で智也は見事に男にしか興味がわかない性的嗜好に変わっていた。智也の体を作り変えた鍋島はやはり男よりも女が好きらしく、男は智也しか相手にしていなかったが相変わらず女は入れ食い状態で、体の熱を持て余した智也が鍋島の家に向かって女と鉢合わせたことも一度や二度ではない。 「お前俺のこと好きなの?」 「うーん、好きか嫌いかで言ったら好きだけど恋人にするのは女がいい」  でもそういいながらも智也と関係を持つ酷い男のことが、智也はいつしか好きになっていた。  今思えばいつから好きだったのかもわからない。あの時同じ誘いを鍋島じゃない違う友達が言っていたとしても智也は首を振らなかっただろう。  鍋島だから。  鍋島だから智也は『是』と答え、今もこうして関係を続けているのだろう。  どちらともなく顔を寄せ合いキスをする。  慣れた手つきで智也の服を暴き、肌に触れる鍋島からはアルコールの香りがした。  合コンに誘われた鍋島から駅まで迎えに呼ばれたのはついさっきのことだった。  指定の店にたどり着けば鍋島はすでに出来上がっていて、彼の友人から連れて帰って欲しいと伝えられた。  鍋島を送り届けたさそうな女はいたが、どうやらその女を鍋島の友人は狙っているらしく自分の障害になりそうな鍋島はさっさと排除したかったのだろう。  鍋島を支えながらタクシーを止め、自らの家の住所を告げる。途中で鍋島が目をさまし、智也の家から自分の家にタクシーの行き先を変え部屋に着くや否や玄関先でキスをされている。  鍋島の両親は父親の海外赴任を機にこの家を子供たちに明け渡した。五つ年上の姉と、七つ年上の兄はそれぞれ結婚をして家を出ている。  もともとは5人で暮らしていた鍋島の実家は今や鍋島一人が住む家となった。  必然的に鍋島の家で抱き合う事が増え、この家には智也の服や生活用品なども置いてある。  キスをしながらリビングに着くころには互いに下着のみを身に着けている状況だった。
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