灰色

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何もする気が起きない。 ぼーっとすることしかできない。 眠いから寝る。 お腹がすくから食べる。 それと同じ。 何もする気が起きないから、 暇つぶし。 もう何もしたくない。 誰もいないところに行きたい。 そして死にたい。 死ぬ…? そうだ。こうすりゃあいいんだ。 こうしてカミサマは、世界を監視することにしました。 カミサマは青い青い、美しい空と、 汚らしい灰色の空を作りました。 けれど、そこに生まれた人々は、灰色の空を美しいと称賛しました。 カミサマも、いつの日か、灰色が美しいと思うようになりました。 人々は灰色に染まりたくて、空に向かって走りました。 けれど、灰色の空には届きませんでした。 カミサマはこれを見て、人々に知恵を授けました。 すると、なんということでしょう。 人々は灰色の空に触れたくて、高い高い塔を建てようとしました。 けれどカミサマは「やっぱり灰色の空は自分だけのものだ」、と塔を壊して、人々にこんなデマを流しました。 「貴方達一人一人が不幸になれば、心があの空の色になれますよ」 皆が皆カミサマの言うことを信じ、不幸になるため努力をしました。 それどころか、自分の不幸を他人に自慢し出す事態になりました。 それでも人々は、心の色なんて分からないものですから、すっかり染まった気になっていました。 なんて愚かなのでしょう。 そしてカミサマは、この狂った世界が愛おしくなりました。 人々が不幸になる程、カミサマはそれを美しく、儚いものだと感じるようになりました。 カミサマは、不幸な人々の命の短さに気付きました。 せっかく築いた不幸を、崩すなんて、もったいない。 カミサマは人々の寿命を永遠としました。 人々はだんだん不幸が嫌になりました。 それでも周りに良く見られたくて、人々は頑張りました。 世界は、灰色に包まれました。 望んだものが手に入っても、人々は不幸を目指しました。 周りに良く見られたいから。 カミサマは取り返しのつかないことになったと嘆きます。ですがもうどうしようもございません。 だから、世界を壊しました。 綺麗な光を放って、世界は崩れました。 そしてまた、世界は再構築されます。 これで一件落着。 世界はまた、きれいな色に戻りました。 またいつか、灰色になる日を恐れながら。
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