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「あのー、藤川君? 私があの時落ち込んでたの分かっちゃった……?」
おそるおそる聞いてみる。
(は? あんなに分かりやすくガッカリしていたのに、僕に分かっていないと思っていたのか。)
藤川は衝撃を受けた。理沙が不機嫌を隠そうとしていたとは。
残念ながらまったく効果はなかったが、理沙が他人に気をつかわせまいと努力していたことは、ただの気まぐれで自分勝手な女という印象を塗りかえるには充分だった。
「うん。分かりやすかったよ? だから何か悪いことを言ったかな、と気になってた。」
藤川は正直に言ってみる。
理沙がどんな反応をするか、見てみたくなったのだ。
予想通り、ガーン、隠してたのにー、何で何で? という顔をしている。
面白い。
「ガーン、隠してたのにー。何で分かったのー?」
藤川は今度は理沙の口まねをして、理沙の気持ちを代弁してみる。
理沙は目も口もを大きく見開いて、藤川を見た。
藤川は我慢出来なくなって、声をあげて笑い転げた。
「ちょっ、ちょっと藤川君、ひどいよー。」
理沙が椅子の上でピョンピョン跳びはねている。
「ごめんごめん。」
(面白すぎて)
という言葉は飲み込んだ。
藤川がなおもくっくっと笑っていると、理沙はあははと一緒に笑い出した。
(西川の周りに、人が集まってくる理由が分かるな。)
藤川はもう一つ、納得した。
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