君はイヌ派

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 理沙は明るくて積極的だと思われているけれど、恋に関しては違う。好かれているから、安心して好きになれる。自分を好きかどうかも分からない相手を好きになったりしたことはなかった。  だから藤川君には理沙はいつもよりも、ずっと慎重だ。  気ままで気まぐれ。ネコみたいにいつも相手を振り回してきた理沙は、消えてしまったみたいだ。  藤川君はイヌタイプかネコタイプかといえば、間違いなくイヌタイプだ。マジメで忠実。飼い主にまっすぐ向ける瞳。味方には優しいけど、敵には容赦しない。  (人間にイヌタイプとネコタイプがあるなら、動物の好みのイヌ派とネコ派は、そのまま人間にも当てはまるのかな?)  そう思うようになってから、理沙は今までのように、迷わずネコ派だって言えなくなった。  藤川君はイヌタイプだから。  「もしかしたら私、イヌも好きかもしれない。飼ったことがないから分からないだけで。」  と理沙は考えたりする。  理沙自身はネコタイプだ。  ダンスのネコの衣装も大好き。長くて細いシッポを持ってウォーキングする振付も大好き。日だまりのお昼寝が好き。  でも藤川君はネコが好きかな?  聞かなくても、答えは分かっている気がして、理沙は悲しくなる。  (イヌ派でもいい。ネコが嫌いじゃないなら。)  理沙は自分がネコ派なのに、イヌタイプの藤川君が好きだと言うことは忘れて、ため息をついた。    
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