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理沙は数学の授業中に、美南に藤川君の事を相談してみようかな、と考えていた。
(でもやっぱり、やめておこう。)
美南はきっと、理沙の恋心を笑ったりはしない。
(それでもやっぱり、やめておこう。)
藤川君の事はまだ、自分の心の中に大事に隠しておきたい気分だった。
(藤川君はイヌ派だけど、ネコもカワイイって言っていたもんね。)
理沙は立ち直りは早い。
(ネコといえば。ネコの衣装、手直ししないと。)
衣装に鈴を縫い付けて、振付に合わせてシャンシャン鳴るようにしたのだが、取り付けの位置が悪く、踊るときに邪魔になる。
だから足首に付けた鈴を取って、手首に付け直すことになったのだ。
それにシッポももう少し下に付けないと、腰の上あたりから生えているように見えてしまう。あと十センチ下に付け直したい。
もう文化祭の日まであまり時間がないので、今日から居残り出来る子たちだけで集まって直すことになっているが、美南は今日は来られないと言っていた。急なことなので、どの位の人数が来られるか分からなかった。
理沙は手直しする衣装の数に、一着を直すためにかかる時間を掛けて、手直しに参加できる人数(推測)で割るという、数学の授業とは関係のない計算に没頭した。
しかし放課後、理沙の計算は全く役にたたない事が分かった。一着の手直しにかかる時間が、理沙の想定した時間よりも3倍以上もかかってしまうのだ。
鈴の数が片足につき、二つあるのだが、衣装を傷つけずに取るのが意外に手間取る。それにシッポも踊っても取れないように、しっかりと留めないといけないが、シッポの素材が硬くて針が通りにくいのだ。
「一日では無理!」
作業を始めてすぐに、この結論は出た。
仕方がないので、これからしばらくの間、毎日ダンスの練習の後、残れる人が残って直すことになった。
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