第1章

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【ダンっ ダダダダ、ダンダン!!っ】  最後の小節を吹き終えると拍手が。なんか初めて暖かい拍手をいただいた。  いよいよ、審査発表だ。結果から言う。 「金賞」だった。  吹奏楽コンクールは三段階で審査される。「金・銀・銅」だ。その中で「金」なのだが、この吹奏楽部コンクールでは通称「ダメ金」と呼ばれる部類だ。金賞でも県大会に進めない。しかし、去年は「銀」だったから・・・ 「グスっ、終わっちゃったよ、県大会いけないよぉ」 サックスの五木さんが泣いている。彼女は受験があるから、県大会いけなかったら引退早くするっていってたっけ。他の部員も何名か泣いている。こっちまで泣けてくるだろっ。  その時だ。 「さーてーと、一区切りだな」 東寺先生が、ホール外のロビーで僕らに向かって話しかけてきた。 「結果は結果だ。ただ、久しぶりに面白かったよ」 僕はきょとんとして先生をみた。 「いろんな演奏がある。技を高める競うのもいいだろう。けど客席と一体となる演奏もいいんじゃないかな」  吹奏楽コンクール地区大会は終わった。早く引退する人もいる。僕は文化祭まで粘ってみよう。このメンバーでどこまで最高の演奏ができるか。やってみたい。  夏は始まったばかりだ。会場の市民会館の外は真っ青な空に入道雲がグォォォと立ち上がっていた。
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