2.永遠に添う

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2.永遠に添う

七月、とてもよく晴れた日の放課後のことでした。 先生からの頼まれ事で一人教室に残っていた天使は、どこからか透き通った美しい歌声が聞こえてくることに気がつきます。どうやらそれは屋上から聞こえてくるようでした。 天使が屋上のドアを開けると、そこには真っ青な夏空が広がっていました。一瞬その光に目が眩みますが、美しい歌声の主の姿を探します。 「白!こっちこっち。」 声のする方へ目を向けると、人魚姫が柵の外から大きく手を振っていました。 「危ないよそんな所に座っちゃ。」 「へいき、それにここ海風がとっても気持ちいいんだ。白もおいで。」 半ば呆れながらも天使は人魚姫のもとへと向かいます。 「怖がらなくても大丈夫だよ。私がきちんと手を握っててあげるから。」 風の音と蝉の鳴き声、そして人魚姫の美しい歌声が澄んだ空へ響きます。まだ日も落ちてない時間、生徒たちの声や雑音が聞こえてきてもおかしくはないのに、不思議なことに人の声は聞こえてきませんでした。 「「世界に二人だけが取り残されたみたい。」」 同時に口から出た同じ言葉がおかしくて、二人とも吹き出してしまいます。いつも通りの二人です。二人にとって、二人でいる時間が何よりも愛おしいのです。
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