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3.美徳の欠如と頽廃への標
海風に当たりながら天使は人魚姫の歌を聴きます。やはりいつ聴いても美しい歌声です。天使は人魚姫以上に美しい歌声の持ち主に出会ったことがありません。
「碧の歌は本当に綺麗だね。」
「そうかな、嬉しい。ありがとう。」
微笑む人魚姫につられて天使も笑顔になります。
「そういえば、今日蓮見くんと話してたでしょ。また告白?」
「うん。でも断ったよ。」
「どうして?学園で1番の人気者なのに。」
「私は白としか一緒にいたくないし白以外に興味もないの。いつも言ってるでしょう?」
「……碧はすごいね。容姿も歌声も本当に綺麗で、何より自分の芯をちゃんと持ってる。すごく羨ましい。」
明るくていつも笑顔で誰とでも仲良くできる人魚姫とは違って、天使は内気で消極的で、学舎では人魚姫と以外会話することはありませんでした。真っ白な髪と肌をもつ天使は、あまりにも周りとは違う見た目のせいで少々避けられていたようです。人魚姫だけはいつも天使の隣にいました。
「私だってその真っ白で綺麗な髪の毛と肌が羨ましいよ。それに白はとっても優しくて美しい心の持ち主だってよく知ってる。本物の天使だって信じてるもの。」
目を輝かせてそう言った人魚姫とは反対に、天使の表情は曇ります。
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