小玉幸彦

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小玉幸彦

 プライド――。それは時に男を奮い立たせ偉大にし、時に男をグズ同様の小物にしてしまう飾り癖。  三流大学を卒業し、新卒採用から早二十年。小玉幸彦は常に下から三番手の男だった。  小玉は誰よりも早く出社し、誰よりも残業をしてこの会社に貢献してきたはずだった。しかし気付けば同期は出世し、部長、支店長へと昇進していく。 当の本人は八歳年下の大和田課長の下で「課長補佐」という備え付け役職が精一杯であった。  残業を美徳とし、女性にお茶汲みをさせる時代は終わった。 無駄を省き短時間でも成果が出るかが着目され、男女問わず個人の能力を重要視するようになった。  一人っ子特有の誰とも競わずに育った環境と年齢のせいで固くなった頭では臨機応変な対応も出来ず、その上人見知り癖がある小玉は幾度となくチャンスを掴めず、いざとなればいつも誰かのせいして逃げていた。 わずかに残った年功序列の古い考えをもった上司が彼に与えたのが課長の「補佐」というお飾り程度の役職だった。
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