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数日後、私の兄、祐と、弟の智と私の3人は引っ越しが決まった。 父が迎えに来るから荷物を纏めて。と母に言われたのだ。 そして、5人兄弟の私達は上3人と下2人で別れる事になった。 下2人の弟たちは、まだ5才と3才で ほとんど家に帰って来ない実の父を覚えていなかった。 私達の引っ越しの日、母は泣きながら 父に見せ付けるように私を抱きしめ 「あなたがパパと住みたいと言った時、私は本当に悲しかった。」と言った。 私は、選んでなどいない。 選ぶ事が出来なかったから。 なぜ、母がそう言ったのか分からない。 ただ、私を抱きしめ泣く母に捨てられたことだけは、はっきり理解する事が出来た。 そうか。私は邪魔だったのか。 わずか10才の私には受け入れる事が難しかったが、ここから始まる日々の中で痛感する。 母の深い心の傷を。
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