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入学式
俺は朝早くから黙々と朝ご飯を作っていた。
しばらくすると、目を擦りながら階段を降りてきた優香が、まだ眠たそうな顔で起きてきた。
「お兄ちゃんおはよー」
「おはよう優香、もうすぐ朝ご飯出来るから先に顔洗ってこい。」
「はーい」
父さんは俺が物心つく前に病気で亡くなっていて、それからというもの、母さんは俺と優香を養うために、朝早くから夜遅くまでずっと仕事をしている。
仕事が忙しくて、家に帰って来れない日も少なくはなかった。
忙しい母さんの為にも、俺は優香の面倒や家事等をしている。
俺は朝ご飯を作り終えて、優香と一緒に食事の準備をした。
俺と優香は準備を終えると椅子に座り、小さな声でいただきますと言って食べ始めた。
「お兄ちゃん、今日入学式だよね?」
「そうだけど、急にどうした?」
「お兄ちゃん友達付き合い苦手そうだからさ、優香心配だなー」
「なっ!?俺にも友達の一人や二人ぐらいいる…と思う。」
「一人や二人しかいないんだね…」
「うっ、そろそろ学校行ってくるな!」
「あ、逃げた。」
俺は食べ終えた食器を雑に重ね、身支度を済ませて玄関へと向かった。
「お兄ちゃん!」
「なんだよ」
「いってらっしゃい!」
「…いってくる」
俺は玄関を出ると静かにドアを閉めた。
俺が今日から通う高校は、家の近くにある駅から三駅先のところで降りて、そこから歩いて二十分程のところにある青常高校である。
俺は高校生活を充実したものにするために、心に決めていた事がある。
それは、絶対に恋愛をしないことである。
二年前、俺がまだ中学二年生だった頃、俺には付き合っている女子がいた。
しかし、付き合い始めて少したったある日、俺はその女子と俺の知らない男子が一緒に居るところを見てしまい、その事について俺がその女子に問い詰めると
「あぁ、あれは彼氏よ?」
「彼氏は俺だろ!?」
「あなたはあの人を振り向かせるためだけのただの道具よ」
「なっ…」
「私とあなたがつり合うわけないじゃない、じゃーね、優斗くん。」
ものすごく大好きだった人に裏切られた俺は、その日を境に人間不信になってしまい、そのせいで友達もいなくなったのである。
二度とこんな思いをしないため、俺は絶対に恋愛をしないと心に決めたのである。
「俺は絶対に恋愛をしない!」
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