変性

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 けれど、いくら経っても回復しないどころか、膨らんだ皮膚は水分を失ってワニの鱗のように硬くなっていきました。そのうちに皺が寄り、ザラザラとした感触へと変化し、発狂しそうでした。総合病院に行き、皮膚だけでなく内臓や血液の検査もしましたが、原因は分かりません。彼氏から何度も連絡がきましたが、こんな醜い姿見せられるはずなく、高校にも行かなくなりました。  部屋に鍵をかけ、親にさえも顔を見せませんでした。 「絶対入ってこないで! 入ってきたら死んでやるから!!」  ザラザラとした硬い皮膚はもう、私の全身を覆っていて、何かに変性しているのではないかと恐ろしくなりました。泣いて泣いて、涙が枯れて乾ききっても、暫くすると泣いていました。  そんなある日、クリームを皮膚に塗っていると、皮膚がぽろりと剥がれ落ちました。ようやく取れた、とホッとした矢先、剥がれた皮膚の下から出てきたものを見て氷水をかけられた気分になりました。そこには、滑った鱗が出来ていたのです。 「いっ……いっ……イヤーーーーーッ!!」  その日から硬くなった皮膚が次々と剥がれていき、代りに粘着質な液体に覆われた鱗に変化しました。  もう死ぬしかない……絶望的な気持ちになった時、ガマ男から言われた言葉を思い出しました。 『き、君を……たっ、助けられるのは……ぼ、僕、だけ……』  同時に、針を刺されたような痛みが私の腕に蘇ります。  たとえこれがあいつの仕業としても、縋るしかない……悲痛な思いでゴミ箱を漁り、底からくしゃくしゃになったメモを見つけました。
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