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おかげでちょっと安心はしたけれど、俺が無知なのがそんなに嬉しいの?
いや、嫌いと言われるより全然良いですけども。
……かなり複雑な気分。
「それはそうですが。しかし、私達の傍にいる人間が家の事情に巻き込まれてしまう可能性は否定出来ません。わんわん君の場合、特に書記が相手ですから一応知っておいた方が良いのでは?」
「あー、それもそっかぁ。わんわん、あのね最初に言っちゃうとワンコ書記はもっの凄い家柄のもっの凄いご子息さまなんだよー。とんでもなくお金持ちだし、少なくとも俺や副会長んちよりはランクが上だから」
副会長さまに促され説明しだす会計さま。
うわ、やっぱ噂通りなのか。
……お金持ちにもランクとかあるの?
「まあ俺様の家とほぼ同じくらいだろ。馬鹿犬のくせによ」
「先輩を侮辱するような発言は止めてください! 僕はそんな人を今後、会長だなんて認めません。むしろリコールや下剋上など手段を選ばず先輩を真の会長にしてみせます。あ、それ良いかも。ふふ」
「テ、テメーは後輩のくせに本気で腹黒いな。やめろ、笑うんじゃねえクソ庶務!」
毒舌(なのか?)っぷりがどんどん増す庶務さま。
その書記さまへの絶対的な尊敬というか忠誠心は一体どこからくるんだろ。
あと、何気に以前より会長さまの不憫度が増しているような。
――バンッ
「皆ずる、い。俺もわんわん、と話し……たい!」
「へ?」
突然、机を叩き立ち上がった書記さま。
妬ましげに皆を睨むと、最後に潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
うっ、止めて……胸がきゅーんってするから勘弁してください。
大体何でこの人、こんなにワンコみたいなんだろう。俺より背が高くて男前なのに、時々めっちゃくちゃ甘やかしたいほど可愛く見えるとか何だよ。
今頭なでたら絶対しっぽブンブン振りそう。
「駄目です。今日のノルマをこなしてからにしてください書記さま」
「……っ、でも……!」
「早くきちんと仕事を終わらせたら、特別なご褒美があるかもしれませんよ?」
「!」
ニッコリと笑う親衛隊長さんの言葉に従い、素早く椅子に腰を下ろす書記さま。
そのまま再び仕事をし始めたからびっくりだ。
絶対また抱きつかれるのではと身構えた分、素直すぎて逆に怖い。
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