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「へ~ご褒美ねぇ」
「チッ」
会計さまと会長さまの舌打ちが重なる。
なな何だ、いきなり!?
今そんな気に障るような出来事がありましたっけ、会長さま。
そうっと様子をみれば眉間に縦の見事なしわが。
……うん、やっぱ不機嫌そうだよね。
「どしたの会長ぉ、急に舌打ちなんて。何か嫌なことでも思いだしたのー」
「あ? お前こそまた変なツラしてんぞ、腹でも痛てぇのかよ」
「え~別に痛くないし。俺のどこが変なのさ、意味分かんない」
ちらりと上目遣いで窺えば、確かに会計さまも笑顔なんだけど……気のせいかさっきまでとは少し雰囲気が違うような。
「?」
「先輩方お二人とも、わんわん君が怯えてます。無駄に喧嘩するつもりなら生徒会室の外でお願いしますね」
「し、しねーよ! つか無駄って何だ」
「ごめんね、わんわん~ほらもぉ怖くないからねぇ」
庶務さまの言葉に、わたわたする会長さま。
困ったような笑顔で取り繕う会計さま。
えーっと。
いや俺、そんなに怯えたつもりは無いんだけど。若干ね、ほんっとにちょこっとだけビクついたくらいですよ。
と、声に出さず言い訳をしてたら会長さまと目が合った。
一瞬大きく見開いた目がパッと逸らされしばらく泳いだ後、再び視線が戻り今度は微妙な笑顔を向けられる。
まるで会長さま自身が一番困惑しているような、納得してない感じの曖昧な表情。
「うん??」
…………まあ、とりあえず俺が会長さまを怒らせた訳でもないみたいだし別にいっか。
あ、忘れてた。
実は「わんわん君が怯えてます」という庶務さま発言のあたりで立ち上がった書記さまは、隊長さんに叱られ渋々仕事を再開させています。
でもって、お願いだから涙目でチラチラ俺を見るのは止めてください。
何だか変に切なくなるし本当、心臓に悪いんだってば。
「書記の仕事もしばらく終わらないようですし、彼を待つ間、わんわん君に貴方達の事情など話してみてはいかがですか?」
「そうですね、まだ教えるには早いかなと思っていたのですが後々面倒なことになっても困りますし。分かりました、せっかくなのでこの機会を有効利用させて頂きます。書記さまも宜しいですよね」
「……ん、まかせ……る」
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