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「ち、ちなみに今も隊長さんの実家で飼われているんですよね?」
「いえ……残念ながら事情が変わり三年ほどであの子は他所へ移されてしまったんです。それに去年、老衰で亡くなりましたから」
「えっ、あ、そうなんですか。すみません、あの、思い出させちゃって」
うおおぉダメだ、墓穴掘った。
涙ぐんでるし隊長さん。あああッ何で気付かなかったよ俺、ずっと過去形で話してたじゃんこの人。
そうだよね、少し考えれば分かるだろって。
生きてたらそもそも『生まれ変わり』とか言う筈ないっつーの。
どど、どうしようこの悲しい雰囲気!
「ふふっ、ほら似てる」
「へ?」
「僕が悲しんだり落ち込んだ時、あの子も今のわんわん君みたいに、オロオロして『どうしようどうしよう』って困った顔になるんですよ。それから僕の周りをうろうろして、気付くと不安そうな目でずっと僕の様子を見守ってて」
懐かしむように話す隊長さん。
泣きそうに笑う姿が、ちょっと切ない。
「もう、わんわん君ってば。泣きそうな目元までそっくりなんだけど」
泣きそうなのは隊長さんですよ、とは何となく言えない。
「…………隊長さんを見守ってた犬君は、慰めてくれたりはしなかったんですか?」
「ううん、慰めてくれたよ。というより僕が勝手に癒されてたかな。くうん、て鳴き声が『大丈夫?』に聞こえて思わず抱きつくとあったかくてね。心音を聞きながらしばらくそのままでいると、顔とか手なんかをペロペロ舐めてくるんだ。それがまた、こそばゆいっていうか。我慢出来ずに僕が笑い出すまで続けるんだよ。
笑いながら『こら、止めろよもう』って言うと嬉しそうにワンッ、て――……わんわん君?」
「俺よく子供体温だって言われるんで。さすがに舐めるのは無理だけどその分、目一杯くすぐりましょうか」
「何ですかその罰ゲーム」
くすくすと笑う振動が、隊長さんに抱きついた俺にまで伝わってくる。
はたから見れば男同士で何やってんの、て感じだろうけど。俺ダメなんだよ目の前で誰かに暗い顔されたり泣きそうだったり、泣かれるのが。
つられてめちゃくちゃ悲しくなるし泣きそうになる。
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