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そこそこ大手メーカーに勤務している俺は、全国各地を飛び回る営業マン。
自分の家にいる時間より、ビジネスホテルにいる時間の方が長い。
ぶっちゃけた話、ビジネスホテルってとこには、色々とぶっ飛んだ「噂」がある場合がある。
俺だって、初めの頃は全くそんな「噂」信じていなかったけどよ。
実際、体験してみると、害はなくても気持ちのいいもんじゃあない。
だから、ある意味自分自身の身を守ることと、安眠の為に、俺はホテルの部屋に入ると、まず最初にする事があるんだ。
それは何かって?
よく言うだろ?
「出る」部屋には、飾ってある絵画の裏に【お札】が貼ってあるって。
それを聞いてから、必ず部屋に飾ってある「絵」や「壺」の裏や下を確認するようにしている。
今夜泊まる「ココ」だってそうだ。
チェックインをし、部屋に入ると、真っ先に壁に掛けてある絵の裏を見た。
その時点でお札が貼ってあれば、部屋をチェンジしてもらう。
でも、今回も特にそんな物はなく、清潔感のある普通のビジネスホテルだ。
これなら安眠は確保出来たも同然だ。
しかも、今日は平日真っ只中。
フロントの話によれば、宿泊客もいつもより少なく、俺の両隣は空室らしく、夜中や朝方、隣の部屋のシャワーの音やテレビの音、人が動く物音で起こされずに済む。
俺は上機嫌で荷物を片付け、接待へと繰り出した。
夜中の零時を回る頃。
今夜は早めに接待を終え部屋に戻って来ると、なんだか妙な感じを覚えた。
辺りを見渡しても特に、部屋を荒らされているような、そんな感じでは無いのだが、何だかおかしい。
ふと、壁際に設置された机を見ると、それが何の違和感なのかが分かった。
そう。
しっかり閉めてあった筈の机の引き出しが、少し開いているのである。
「あれ? 閉ってた筈なのに……」
そうは思っていても、実際には自分の勘違いっていう事も多い。
俺は、はじめっから開けっ放しだったんだろうと自分を納得させ、引き出しを閉めると熱いシャワーを浴びた。
浴室から出ると、またもや引き出しが開いている。
これは、机自体の造りが悪いのか?
なんて思いながらも、翌朝、早くから得意先へプレゼンに行かなくてはいけないので、気にせず寝る事にした。
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