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清水先輩の突然の死は、学校中を騒がせた。自殺、事故、事件、様々な憶測が飛び交った。
学校は勿論、家庭環境にも問題はない。受験に悩んでいたというのも、清水先輩に限ってはあり得なかった。志望校はすでにA判定だという。
じゃあ事故か?そもそも、マンションの三階に住む清水先輩が、何故、十階まで上がったのかが分からない。目撃情報から、清水先輩は一人で階段を上がって行ったという。
やはり事件?これが一番ありそうだった。ストーカーに追われて、など噂が飛び交ったが、清水先輩は一人で歩いて階段を上ったという。しかも、落下直後にも怪しい人はいなかったらしい。
結局、清水先輩は何らかの理由で十階まで上がり、手摺から身を乗り出し過ぎたことによる事故として、処理された。
「今日、清水先輩の葬儀だって」
「そっか……」
三年の先輩たちは全員行くのだろう。文化祭を最後に一応引退した三年の先輩たちは、暇なのか気晴らしなのか、よく部に顔を出していた。今日は誰も来ないと思っていたら、そういう理由だったらしい。
「清水先輩、何であんな所に行ったのかな」
「さあな……」
素っ気なく返事をしながらも、俺はあの時の清水先輩の言葉を思い出していた。
『綺麗な夕陽を見ていると、飛びたくならない?』
清水先輩は、夕方に亡くなったらしい。その日はよく晴れていた。きっと、夕陽も綺麗だったのだろう。清水先輩は、夕陽に向かって飛んだのだろうか?
「そんな訳あるか!」
「何だ?急にどうした?」
「すみません。……何でも、ありません」
あり得ないと思いつつ、俺はその思考から抜け出せなくなっていた。
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