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「万桜」
「なぁに?」
万桜の瞳からはとうとう、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちてしまった。
「夢は、過去の記憶が整理される過程で生まれるものなの。夢はあくまでもねつ造された映像を私たちに見せていて、実際の映像じゃない」
「で、でも……!朝起きたとき、本当にそうだったなって思い出してっ!」
はぁー、と、りーちゃんの深いため息。
「そう思い込んでるだけ。大体、早く外れてくれないと碧くんとペアリングできないーって、考えながら寝てるからそんな夢見るのよ」
――うっ!
確かに、ベッドのなかで延々と考えてました……。
「そ、そうなのかなぁ?」
なんだかりーちゃんがそう言うと、そんな気がしてきた。
「そうよそうよ、絶対そうよ」
うーん、と、万桜が頭を悩ませていると。
「――万桜っ!どうしたっ?」
気付くと目の前に突然、碧くん。
急いで駆け寄ってきたのか、息を切らしながら、真剣な表情で、万桜を見つめている。
「えっえっ?」
急な展開に、頭が追い付かない。
と、す、と碧くんの綺麗な指先が、万桜の頬に触れる。
「泣いてる」
――はっ!
「ち、違うの!これはその、誤解?だったというか、ね、りーちゃんっ!」
咄嗟にりーちゃんに助け船を求める。
さっきまで私がいくら違うって言っても頷かなかった癖にっと、りーちゃんはしらぁーとした目を万桜に向けてから(被害妄想)、
「碧くん。万桜がね、私は幸せになれないーって泣いてたのよ」
爆弾を落としやがった。
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