第二話

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碧くんと付き合って、もうすぐ半年。 だけど実は、キスをしたことがない。 りーちゃんに相談すると、 「大事にされてるんだよ、惚気うざっ!」 と言われたけれど、 『長く一緒にいると、もう女性としての魅力を感じないんですよね』 『付き合ってから、あーやっぱ違ったなぁって思うことはありますよ。でもこっちから告ったし、すぐ別れるのは可哀想じゃないっすか。だから、その子はキープにして、本命の子探しに行っちゃいますね。男はハンターっすから』 って、深夜の番組でやってた。 その日は布団のなかで半泣きになりながら、翌日の放課後、唇がぷるぷるになるリップを薬局に買いに行った。 「似合わない」 というりーちゃんの一言で、そのリップは結局、すぐさまお蔵入りとなってしまったけれど。 あんな、さっきみたいな雰囲気になったのは、初めてだった。 火照る顔に両手のひらをあてる。 触れた部分がひんやりとして、気持ちいい。 ――あぁ……。 「キス、したかったな」
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