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りーちゃんは演劇部の練習があるから、廊下でバイバイした。
私は帰宅部なので(本当は何か楽そうな文化部に入りたかったけど、この学校の文化部はどれもガチすぎて今に至る)、もう帰ろうと、昇降口で靴を履き替えていたときだった。
「――あ」
思わず、声に出してしまった。
「ひ、久しぶり……だね?」
「……」
――ひぃいいっ!やっぱり話しかけない方が良かったのかな……。いやでも、別に喧嘩したわけでもないし……。
と、万桜があたふたしていると。
「ん、久しぶり」
八神蓮は凭れていた壁から背を離すと、だるそうに言った。
「あ、えーと……」
――なにか、なにか会話っ!
「……碧は?一緒じゃねぇの?」
「えっ!あ、今日は生徒会でっ!」
話しかけてもらえるなんて思ってなくて、万桜はテンパる。
「あっそ。なんだ、てっきりもう碧に振られたかと思ったわ」
「ちょっ!縁起でもないこと言わないでよぉ!」
フン、と口を歪めて、意地悪そうに笑う蓮。
――あ、なんか、この感じ、久しぶりだなぁ……。
蓮は、碧くんの双子の弟で、万桜の一番仲の良い友達だった。
碧くんと仲が良かったのは、小学校高学年までだったけれど、蓮とは、中学にあがってからもずっと一緒にいて、二人で遊びに行ったり、受験前には勉強を教え合ったりしてた。
だけど、高校にあがってからは、クラスが分かれたこともあってか、あんまり話す機会がなくなってしまって。
おまけに、廊下で会っても、なんだか無視されているような気がしてて、最近は気まずかったのだ。
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