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万桜があわあわしていると、
「じゃーな、俺もう帰るわ」
蓮が一人で昇降口を出ようとする。
「えっ!私も帰るよ!一緒に帰ろうよ!」
慌てて、蓮の隣に駆け寄る。
と、はぁー、と蓮の深いため息。
「お前、いいのかよ……」
「え、いいってなにが?」
「……まぁ、一緒に帰るくらい別にいい、か」
ぼそりと蓮がなにか呟いたけれど、うまく聞き取れなかった。
「え?なに?なんの話?」
「ばーか」
「なっ!」
蓮には帰りの道中もずっとばかにされたけど、万桜は蓮と昔みたいに話せて嬉しかった。
「つぅか、これ、まだ外れねぇの?」
「そうなのー!蓮、なんとかしてよぉー!」
「一生付けてろ」
「え、ひどっ!」
見上げれば、九月の空は高く澄み渡っていて、涼しい風がスカートをひらひらと揺らす。
碧くんと付き合えるのが当たり前じゃないように、蓮と友達でいられるのも、きっと当たり前じゃないから。
碧くんとも、蓮とも、今の関係がずっと続きますように。
大事にしよう。
万桜は懐かしい横顔を見つめながら、そんなことを思った。
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