第一話

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万桜があわあわしていると、 「じゃーな、俺もう帰るわ」 蓮が一人で昇降口を出ようとする。 「えっ!私も帰るよ!一緒に帰ろうよ!」 慌てて、蓮の隣に駆け寄る。 と、はぁー、と蓮の深いため息。 「お前、いいのかよ……」 「え、いいってなにが?」 「……まぁ、一緒に帰るくらい別にいい、か」 ぼそりと蓮がなにか呟いたけれど、うまく聞き取れなかった。 「え?なに?なんの話?」 「ばーか」 「なっ!」 蓮には帰りの道中もずっとばかにされたけど、万桜は蓮と昔みたいに話せて嬉しかった。 「つぅか、これ、まだ外れねぇの?」 「そうなのー!蓮、なんとかしてよぉー!」 「一生付けてろ」 「え、ひどっ!」 見上げれば、九月の空は高く澄み渡っていて、涼しい風がスカートをひらひらと揺らす。 碧くんと付き合えるのが当たり前じゃないように、蓮と友達でいられるのも、きっと当たり前じゃないから。 碧くんとも、蓮とも、今の関係がずっと続きますように。 大事にしよう。 万桜は懐かしい横顔を見つめながら、そんなことを思った。
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