もう少しで

10/14
前へ
/14ページ
次へ
彼女は三年間誰よりも頑張っていた。 けれど彼女は、大半の部員と……その、端的に言うと仲が悪かった。 そして、彼女は顧問とも仲が悪かった。 一年の頃に深い溝が出来て以来ーーーその溝はさらに深く深くなっている。 「だって、顧問まで敵だったら、味方誰だよって……感じじゃん?」 「うん」 「無理じゃん、そんなの……無理だよ」 「うん」 だけど彼女は、実力で顧問に自分を認めさせようとした。その結果、彼女は、部員たちの中でも特に上手くなったらしい。 だが、それが、顧問と他の部員達に、理由を与える結果となった。 ……小南 加美は個人プレーばっかりで、協調性が無く、チームプレーには向かない、と。 「あんたらにそんな事言われたくないっつうの。……そう、思った。あんたらは試合に出ないだろうが、って」 彼女の味方をしてくれた部員もいた。 それは、彼女よりかは劣るが、それでも普段から頑張って練習をして、レギュラーに選ばれた人たち。 「けどさ、だけど……っ!」 それでも駄目だったと、彼女は言った。 あの日、僕に元気を込めてくれた彼女の姿は、どこにも見えなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加