2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
優しい風が吹いていた。
夏休み前のある日、僕と、僕の隣を歩く女子生徒ーーー小南加美は、学校の校門から続く大通りを歩いていた。
「もうすぐ大会だけど、どう?」
どう?
その言葉に込められているのは、僕が高校最後の大会に出場出来るかという事。
一瞬の思考の末、すぐに僕は答える。
「多分、大丈夫。……だと思うけど」
バシンッと背中を思いっきり叩かれた。
「なんでそんなに自信ないのっ! もっと男らしくしろー!」
「うんっ。うん、うん……う~ん」
バシンッと、今度はさっきよりも1.5割増しの威力で叩かれた。
うっすらと涙目になりながら、僕は隣の彼女に、どうして叩くの!? と訴える。
だが、隣にいる彼女は、この夏の空の様な快活な笑みを浮かべ。
「元気を込めたの。私の元気を、少しだけ分けてあげたの」
「そうすると、小南の元気が減っちゃわない?」
「大丈夫。私の元気は、あんたの百倍あるから」
あながち間違いでも無いな……と、そんな感想を持ちながら、僕は隣の彼女と共に歩き続ける。
もう少しで高校最後の大会だ。不安と恐怖と、ほんのすこしの期待と興奮を混ぜた様な感情を胸に抱きながら、僕は、この青い空を仰いだ。
「無責任だけどさ……ほんとにただの私のわがままなんだけどさ……大会、出てね」
「……うん」
「その代わり……私も、頑張る」
「うん」
約束ーーーそう彼女と顔を見合わせて、笑った。
最初のコメントを投稿しよう!