もう少しで

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優しい風が吹いていた。 夏休み前のある日、僕と、僕の隣を歩く女子生徒ーーー小南(こなみ)加美(かみ)は、学校の校門から続く大通りを歩いていた。 「もうすぐ大会だけど、どう?」 どう? その言葉に込められているのは、僕が高校最後の大会に出場出来るかという事。 一瞬の思考の末、すぐに僕は答える。 「多分、大丈夫。……だと思うけど」 バシンッと背中を思いっきり叩かれた。 「なんでそんなに自信ないのっ! もっと男らしくしろー!」 「うんっ。うん、うん……う~ん」 バシンッと、今度はさっきよりも1.5割増しの威力で叩かれた。 うっすらと涙目になりながら、僕は隣の彼女に、どうして叩くの!? と訴える。 だが、隣にいる彼女は、この夏の空の様な快活な笑みを浮かべ。 「元気を込めたの。私の元気を、少しだけ分けてあげたの」 「そうすると、小南の元気が減っちゃわない?」 「大丈夫。私の元気は、あんたの百倍あるから」 あながち間違いでも無いな……と、そんな感想を持ちながら、僕は隣の彼女と共に歩き続ける。 もう少しで高校最後の大会だ。不安と恐怖と、ほんのすこしの期待と興奮を混ぜた様な感情を胸に抱きながら、僕は、この青い空を仰いだ。 「無責任だけどさ……ほんとにただの私のわがままなんだけどさ……大会、出てね」 「……うん」 「その代わり……私も、頑張る」 「うん」 約束ーーーそう彼女と顔を見合わせて、笑った。
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