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曇り空だった。
天気の良い日が続いていた最近では、もうとっくに見かけなくなった悪天候。
そのせいなのか何なのか、僕の隣を歩く彼女の表情も曇って見えた。
……気のせいだとは思いいつも、僕は隣を歩く彼女に話しかけた。
「なんか、あった?」
「うん。あった」
これは相当重症だ。
彼女が馬鹿正直に言ってくるのは、相当弱っている証拠でもあるのだ。
「どうしたの」
「言いたくない」
そして、
「なんかあったんだよね?」
「うん」
「じゃあ、何があったの?」
「言いたくない」
僕と彼女の無限ループが始まるのだ。こうなってしまうと、もう抜け出せない。僕は僕で意地になってなんとしてでも聞き出そうとするが、彼女は彼女で意地になって頑なに言わない。
ふう。無理だ。
そんな結論を暫くしてから出した。
僕は、彼女が気の向いた時に聞いてあげられるぐらいが丁度良いのかもしれないと、そう考えた。
空は今にも雨が降りそうなぐらいの悪天候であった。
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