金魚花火

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額、頬、肩から腕にかけて汗が体を伝っていく。 この汗は夏祭りの熱気のせいじゃない。 周囲では太鼓を叩く音であったり、行き交う人達の喧騒が賑やかである今日この頃。 そんな中物音を立てずに真剣に右手を、そしてその先を集中して見つめる。 ポチャッ。 …むむ。 金魚すくいのポイに開けてしまった穴を見つめる。 …何故だ。 穴の開いたそれを下から覗いたり上から覗いたりしてみる。 「…もういいよー。優(ゆう)くん。」 「…」 続けて失敗する自分に対して気を使う言葉が聞こえる。 「いや、由紀(ゆき)。今度こそは絶対!」
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