あの時の足は

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あの時の足は

 「9月にキャンプに行くんだよ」  そう言ったのは小学四年の長女だ。  昨日子供達が寝た後、1人シャワーを浴びている最中に、長女のその言葉が不意に浮かんだ。  それと同時に、自分のキャンプ体験も思い出した。  小学四、五年生でキャンプをするのは、今も昔も変わらない。私も同時期に、学校行事のキャンプがあった。  今もあるかは分からないが、行き先は富士の裾野に広がる林間学校の施設。大きなリュックを背負って、バスに乗っただけで冒険の始まりのような気持ちになったのを覚えている。  各班に分かれて、山中(さんちゅう)でオリエンテーリングをして、薪割り体験と飯盒炊爨(はんごうすいさん)。  みんなでカレーを作り、無敵だと思っていた先生が実はジャガイモが苦手だったり、教室では地味な女子が一番料理上手だと判明したりして、クラスの距離感がぐっと縮まったように思えた。    キャンプファイヤーは炎の大きさに全員で驚き、男女構わず手を握り合ってはしゃいだ。  日常の何倍も「楽しい」を詰め込んだような1日。  そんな1日が終わる。山は夜の気配を色濃くしていく。   「テントに入ったら、班長は全員揃っているか確認してください」     
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