能登の夏、接近遭遇の夏

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 空港からシオリの家、即ち俺の母親の実家までは、四十キロくらい離れている。今時の軽トラにはクーラーがあるので、道中は快適だった。 「……で、伯父さんの容態はどうなんだ?」  俺は早速本題を切り出した。シオリの父親で俺の母親の兄、イチロウ伯父さんの見舞いが、今回の俺の旅のメインミッションなのだ。  とたんに、ハンドルを握っているシオリの顔が曇る。 「うん……昨日手術やってんけどね……見舞いには()んでいい、って……」 「……」  それはつまり、面会謝絶、ということか? あまり人に言えない病気だと聞いてはいたが……  子供の頃、伯父さんには随分かわいがってもらった記憶がある。俺は胸が痛んだ。 「そんなに、悪いのか……」 「だってね……」  辛そうに顔をしかめていたシオリが、いきなりいたずらっぽい笑みを浮かべる。 「明後日で退院だから」 「……は?」 「うん。退院したらぁンね、後は二ヶ月に一回通院するだけでいいんやって。それも早ければ半年、長くて一年くらいで完治するげんて」 「なんじゃそりゃあ!」俺は思わず大声になる。「そもそも何の病気だったんだよ!」 「痔瘻」 「じろう?」 「ほら、お尻の病気やよ。だからあまり人には言えんかってん」 「……」  完全に俺は拍子抜けしていた。つか、俺、何のために来たんだよ…… ―――
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