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七尾市石崎町。海に面した漁師町である。その中程にあるシオリの家は、瓦屋根の二階建てだが、田舎の家らしくかなり大きい。到着するとすぐ彼女の母親のヤスコ伯母さんが出迎えてくれた。
「お久しぶりです、伯母さん」
「あっらー、カズヒコくん、えらい大人っぽくなったねぇ。まんで男前やぞいね」
この人の笑顔はシオリのそれに通じるものがある。てか、むしろシオリがこの人に似てきているのだ。昔はこの人もかなり美人だったらしいが、今では単なる田舎のおばちゃんである。
一応彼女にも伯父さんの様子を聞いたが、シオリの話と完璧に一致した。だとしたら俺はここにいる理由が全くない。の、だが……
「今夜は和倉の花火大会やしぃ、シオリと一緒に見に行ったらどうや?」
「ええっ? そうなんですか」
「あれ、それに合わせて来たんでないがんけ?」
「いえ、知りませんでした」
「ほんな。もうね、この娘ぉ、今年浴衣新調してんのにぃ、花火行けんくなった言うてぇ、昨日まで泣いとってん。ほやけどぉ、カズヒコくんがおったら、あんたも行くやろ?」
伯母さんがシオリを見ると、彼女は恥ずかしそうな顔で小さくうなずく。
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