能登の夏、接近遭遇の夏

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 結局、俺は伯父さんが退院するまでシオリの家に泊まることになった。最初は俺も、市内のネカフェか和倉のビジホにでも泊まろうかと思っていたのだが、シオリ親子が、男手が必要なこともあるから、と言って聞かなかったのだ。ヤスの部屋が空いてるからそこで寝たらいい、と。俺と同い年のヤスは今は金沢にいるのだが、今年は大学のサークル活動が忙しいらしく、夏休みになっても帰らないという。  だからと言って、年頃の女の子がいる家に若い男を泊めるのも、我ながらどうかと思うが……ま、信頼してくれてる、ってことなんだろう。  シオリの家から和倉温泉は、近くはないが歩いて行けないほどでもない。早めに夕食を済ませた俺とシオリは、散歩も兼ねて午後六時すぎに出かけることにした。浴衣姿のシオリは、結構ヤバかった。花火大会直前にこいつを振ったこいつの元彼が見たら、きっと後悔したことだろう。  道すがら、シオリと共通の話題など何もないだろうと思っていたが、子供の頃の思い出話やソシャゲの話などで意外に盛り上がった。そして、俺たちは絶好の花火見物スポット、わくわくプラザに到着した。加賀屋旅館の隣、海に面した広場だ。俺たちはそこで花火が始まるのを待った。  午後八時過ぎ。ようやく花火が始まった。名物の水中三尺玉はすごかった。わくわくプラザで見ていると本当に目の前で爆発するのだ。衝撃波が体感できるくらいである。  午後九時過ぎに花火は終わった。俺たちは帰途についた。  花火の間終始テンション高めだったシオリは、何故か少し沈んだ表情で黙ったままだった。 「どうした、元気ないな。疲れたか?」  俺がそう言うと、シオリは取ってつけたように笑顔を浮かべる。 「ううん、そんなことないよ」 「でも……なんかテンション低くないか? やっぱ俺とじゃなく、彼氏と行きたかったか?」 「え?」シオリはキョトンとした顔になるが、やがてぶんぶんと首を左右に振る。 「なんもやわいね(違うってば)!そんなんやない!」 「だったら……どうしたんだよ?」 「うん……」  シオリは深刻そうに顔をしかめる。 「実はね、ウチ……カズ兄ぃに一つ、相談したいことがあるげん」 ―――
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