2日目 行方不明

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   ⑤  ナツキたちは行く先々で出会う犬や猫の動物たちにゲーム機越しで話しかけて、トッティの行方を尋ね回った。 『ああ、その犬なら知っているけど、最近は見かけてないよ』 『知らないね』 『ん? ああ、シバのところのヤツか。すまんね、ウチのボスから敵対関係あるヤツらと口にするなと言われているからな‥‥。だけど、最近は見てないぜ』  ゲーム機は正常(せいじょう)に動作しているのか解らないが、鳴き声をヒカルたちが解る言葉(ことば)翻訳(ほんやく)されていく。   ナツキは(トッティ)探しよりも動物たちとの会話に楽しさを感じており、トッティ探しの辛さと心配は何処(どこ)へやらな感じだった。 「ナツキちゃん、何か楽しそう」 「まぁ、あんなもんでしょう。異人(?)とのコミュニケーションを取れる楽しさは」 「魔女(マギナ)さん。この間からそうだけど。魔女さんの魔法って、なんかイメージしていたものと少し違うよね」 「イメージと?」 「ほら魔法って言うと、空を飛んだり、ネズミを馬にカボチャを馬車に変えたりするもんじゃない。それに今回みたいでも、ああやってゲーム機じゃなくて、直接動物が話せるようにするとかあるじゃない?」 「ああ、よく絵本とかでそういった魔法があるわね。もちろん、そういったものも使えるけど‥‥。いいヒカル。前にも説明したけど、万物の事象を理解することが出来れば魔法は誰にだって使えるようになる。その一例が機械よ。それに現にあったりするんでしょう、ああいう翻訳機が」 「おもちゃだけどね」  犬の鳴き声を翻訳する玩具の存在はヒカルも把握していた。 「それでイイのよ。存在していることが何よりも重要なことよ」  魔女とヒカルを余所(よそ)に、ナツキは一軒家の入り口付近の犬小屋で鎖に繋がられて伏せている犬に訊ねていた。 『そいつなら新参者(しんざんもの)だったから吠えてやったよ。そうしたら、あの川の方へ行ったぜ』  犬は反対方向の道路のガードレールの奥で流れている川に視線を向けた。  川というのは市内の中央を分断するように流れている“境川”。二級河川(にきゅうかせん)で深くも幅広(はばひろ)くもない。  ヒカルたちにとっても馴染(なじ)みのある川で、遊び場だったり、川の上流には鶴美山(つるみざん)がそびえ立っており、一学期の春頃に(もよお)された遠足ではこの境川の河川敷(かせんしき)を通って鶴美山を目指したりした。  河川敷の道幅は広く、草が生い茂っている。  等間隔(とうかんかく)に桜の木が植えられており、春には花見客(はなみきゃく)(にぎわ)うところだが、今は深緑(しんりょく)の葉が()(しげ)っていた。  ヒカルたちはその境川の橋の端にある石階段(いしかいだん)から河川敷(かせんじき)に下りて、辺りを見渡す。  現時点で唯一の目撃情報(もくげきじょうほう)について、ヒカルがナツキに確認をする。。 「ここにトッティが?」 「うん。こっちに行ったのを見たんだって。もしかしたら草っ原とかに隠れているかも知れないからヒカルたちはそっちを探して!」 「う、うん。わかった。魔女(マギナ)さんも‥‥」  ヒカルが魔女(マギナ)の方を見ると、これまで見たことがない怪訝(けげん)そうな表情を浮かべていた。 「(いつも笑っているのに‥‥)どうしたの?」 「ちょっと変な違和感(いわかん)がしてね」 「違和感?」  再び辺りを見渡して見るが特に変な感じはしなかった。  一見(いっけん)して、いつものの境川だ。 「そうかな?」 「なんて言うのかな。おねしょをしたヒカルが、布団(ふとん)を隠そうとしているような感じがするのよね」 「なに、その例えは‥‥」  魔女の変な言い草に(あき)れるヒカルに気付いたナツキが声をかけてくる。 「二人とも、なにしているのよ。早くトッティを探そうよ!」 「うん。あれ、魔女さん‥‥」  魔女(マギナ)川岸(かわぎし)の隅に大人が身を(かが)めれば、ギリギリ入れるほどの大きなサイズの排水口に近づき、中を覗き込んでいた。 「魔女さん、なにやっているんですか?」 「もしかしたら、この中にワンちゃんが入ったかも知れないわよ」  奥は真っ暗で何も見えなかったが、何かの気配を感じ取ったのか魔女(マギナ)躊躇(ちゅうちょ)なく身を屈めながら排水口に入っていった。 「え? ちょっと魔女さん」  後を追うようにヒカルたちも排水口に入ろうとするが、無意識(むいしき)に足を止めてしまった。 「あ、あれ?」  入り口で(とど)まっているヒカルに先行く魔女が声をかける。 「どうしたの?」 「いや、なんでか。足が止まって‥‥動かせないというか」 「ここに近づいちゃダメな感じがして‥‥」  ヒカルとナツキはまるで地面に足首を(つか)まれているようで、一歩も足を踏み出せないでいた。 「なるほど、結界が張られているのね」  二人の様子を見て、ヒカルのような“普通”の人間が入れない仕掛けが仕組まれているのを(さっ)すると共に、この排水口の奥に異様なものが在ると確信した。  魔女が軽く拍手(かしわで)のように手を叩くと、ヒカルたちの足が動くようになったが、 「「うわわわわっっっ!」」  突然だった為にバランスを(くず)し、二人は(たお)れ込んでしまった。 「痛たた‥‥」 「なにやっているのよ。ほら、さっさと行くわよ」 「ちょっと待ってよ、魔女(マギナ)さん!」  お構いなしにと魔女(マギナ)はスタスタと排水口(はいすいこう)の奥へと進んでいく。  ヒカルとナツキは立ち上がり、お互いの顔を見合わせると「後を追いかけるしかない」と心で(つぶやき)き、魔女の後を追いかけていった。    ⑤  ナツキたちは行く先々で出会う犬や猫の動物たちにゲーム機越しで話しかけて、トッティの行方を尋ね回った。 『ああ、その犬なら知っているけど、最近は見かけてないよ』 『知らないね』 『ん? ああ、シバのところのヤツか。すまんね、ウチのボスから敵対関係あるヤツらと口にするなと言われているからな‥‥。だけど、最近は見てないぜ』  ゲーム機は正常(せいじょう)に動作しているのか解らないが、鳴き声をヒカルたちが解る言葉(ことば)翻訳(ほんやく)されていく。   ナツキは(トッティ)探しよりも動物たちとの会話に楽しさを感じており、トッティ探しの辛さと心配は何処(どこ)へやらな感じだった。 「ナツキちゃん、何か楽しそう」 「まぁ、あんなもんでしょう。異人(?)とのコミュニケーションを取れる楽しさは」 「魔女(マギナ)さん。この間からそうだけど。魔女さんの魔法って、なんかイメージしていたものと少し違うよね」 「イメージと?」 「ほら魔法って言うと、空を飛んだり、ネズミを馬にカボチャを馬車に変えたりするもんじゃない。それに今回みたいでも、ああやってゲーム機じゃなくて、直接動物が話せるようにするとかあるじゃない?」 「ああ、よく絵本とかでそういった魔法があるわね。もちろん、そういったものも使えるけど‥‥。いいヒカル。前にも説明したけど、万物の事象を理解することが出来れば魔法は誰にだって使えるようになる。その一例が機械よ。それに現にあったりするんでしょう、ああいう翻訳機が」 「おもちゃだけどね」  犬の鳴き声を翻訳する玩具の存在はヒカルも把握していた。 「それでイイのよ。存在していることが何よりも重要なことよ」  魔女とヒカルを余所(よそ)に、ナツキは一軒家の入り口付近の犬小屋で鎖に繋がられて伏せている犬に訊ねていた。 『そいつなら新参者(しんざんもの)だったから吠えてやったよ。そうしたら、あの川の方へ行ったぜ』  犬は反対方向の道路のガードレールの奥で流れている川に視線を向けた。  川というのは市内の中央を分断するように流れている“境川”。二級河川(にきゅうかせん)で深くも幅広(はばひろ)くもない。  ヒカルたちにとっても馴染(なじ)みのある川で、遊び場だったり、川の上流には鶴美山(つるみざん)がそびえ立っており、一学期の春頃に(もよお)された遠足ではこの境川の河川敷(かせんしき)を通って鶴美山を目指したりした。  河川敷の道幅は広く、草が生い茂っている。  等間隔(とうかんかく)に桜の木が植えられており、春には花見客(はなみきゃく)(にぎわ)うところだが、今は深緑(しんりょく)の葉が()(しげ)っていた。  ヒカルたちはその境川の橋の端にある石階段(いしかいだん)から河川敷(かせんじき)に下りて、辺りを見渡す。  現時点で唯一の目撃情報(もくげきじょうほう)について、ヒカルがナツキに確認をする。。 「ここにトッティが?」 「うん。こっちに行ったのを見たんだって。もしかしたら草っ原とかに隠れているかも知れないからヒカルたちはそっちを探して!」 「う、うん。わかった。魔女(マギナ)さんも‥‥」  ヒカルが魔女(マギナ)の方を見ると、これまで見たことがない怪訝(けげん)そうな表情を浮かべていた。 「(いつも笑っているのに‥‥)どうしたの?」 「ちょっと変な違和感(いわかん)がしてね」 「違和感?」  再び辺りを見渡して見るが特に変な感じはしなかった。  一見(いっけん)して、いつものの境川だ。 「そうかな?」 「なんて言うのかな。おねしょをしたヒカルが、布団(ふとん)を隠そうとしているような感じがするのよね」 「なに、その例えは‥‥」  魔女の変な言い草に(あき)れるヒカルに気付いたナツキが声をかけてくる。 「二人とも、なにしているのよ。早くトッティを探そうよ!」 「うん。あれ、魔女さん‥‥」  魔女(マギナ)川岸(かわぎし)の隅に大人が身を(かが)めれば、ギリギリ入れるほどの大きなサイズの排水口に近づき、中を覗き込んでいた。 「魔女さん、なにやっているんですか?」 「もしかしたら、この中にワンちゃんが入ったかも知れないわよ」  奥は真っ暗で何も見えなかったが、何かの気配を感じ取ったのか魔女(マギナ)躊躇(ちゅうちょ)なく身を屈めながら排水口に入っていった。 「え? ちょっと魔女さん」  後を追うようにヒカルたちも排水口に入ろうとするが、無意識(むいしき)に足を止めてしまった。 「あ、あれ?」  入り口で(とど)まっているヒカルに先行く魔女が声をかける。 「どうしたの?」 「いや、なんでか。足が止まって‥‥動かせないというか」 「ここに近づいちゃダメな感じがして‥‥」  ヒカルとナツキはまるで地面に足首を(つか)まれているようで、一歩も足を踏み出せないでいた。 「なるほど、結界が張られているのね」  二人の様子を見て、ヒカルのような“普通”の人間が入れない仕掛けが仕組まれているのを(さっ)すると共に、この排水口の奥に異様なものが在ると確信した。  魔女が軽く拍手(かしわで)のように手を叩くと、ヒカルたちの足が動くようになったが、 「「うわわわわっっっ!」」  突然だった為にバランスを(くず)し、二人は(たお)れ込んでしまった。 「痛たた‥‥」 「なにやっているのよ。ほら、さっさと行くわよ」 「ちょっと待ってよ、魔女(マギナ)さん!」  お構いなしにと魔女(マギナ)はスタスタと排水口(はいすいこう)の奥へと進んでいく。  ヒカルとナツキは立ち上がり、お互いの顔を見合わせると「後を追いかけるしかない」と心で(つぶやき)き、魔女の後を追いかけていった。
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