2日目 行方不明

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   ⑦ 「ここは‥‥外!?」  あっという間に外へ出てきていることに面食(めんく)らうヒカル。  それに加えて先ほど自分たちが入っていた排水口の穴が、トッティがかろうじて入れる程度に小さくなっていた。 「あれ? ど、どうして?」 「おそらく“誰”かが“魔法”で創りだしたのよ。あの犬をあんな風にしたのもね」 「魔法? 魔女(マギナ)さん以外に魔法が使える人がいるの?」 「前にも言ったでしょう。魔法を理解すれば、誰だって魔法を使うことはできるって。もしかしたら、さっきみたいに空間を広げる魔法や合成の魔法を理解した“者”がいるかもしれないわね」 「それって‥‥」  魔女の言葉にヒカルは(おどろ)きと共に不安(ふあん)を感じた。あんな化物を創り出せる魔法を使える人間が魔女(マギナ)以外にもいることに。 「あ、あの‥‥」  難しい顔を浮かべている二人の間を割って、トッティを抱きかかえているナツキが声をかけてきた。 「ありがとうございます。トッティを見つけてくれて‥‥。そしてその…助けてくれたんですよね?」 「まぁ結果的にそうなったのかしらね」と魔女(マギナ)はサラッと答える。 「それで‥‥。その…あなたは一体何者なんです? 明らかに普通の人じゃないですよね。さっきの出来事といい、化け物になっていたトッティを元に戻したりとか‥‥」 「あら、ヒカルから何も聞いていないの?」 「まだ詳しくは‥‥」  魔女(マギナ)は白いワンピースのスカートの(すそ)をたくし上げるカーテシーポーズを取り、名乗った。 「ご覧の通り魔女(まじょ)よ」 「ま、マジョ‥‥魔女!?」  ヒカルと同じような驚きを見せるナツキ。  既に陽が山に落ちて行き、夕焼けのオレンジ色の日差しが魔女(マギナ)のイタズラな笑顔を照らしだす。 「ふふ。さて、ワンちゃんも見つかったことだし、今日はお開きにしましょうか。もう夕方だし、お腹が空いちゃった。早く家に帰りましょう!」 「あ、ちょっと待って‥‥」  山ほど()きたいことがあったナツキは魔女(マギナ)に詰め寄ったが、魔女(マギナ)は立てた人差し指を、そっとナツキのおデコに突っついた。 「今日は疲れちゃったから。質問とか詳しいことは明日ね!」  すると突然の眠気がナツキに襲いかかり、力無く身を崩してその場で眠り込んでしまった。 「ま、魔女(マギナ)さん! なにしたの!」 「だって、流石の私も疲れちゃったし。この後に質問攻めされるのが目に見えて解ったから、ナツキには悪いけど眠って貰ったのよ」 「だからって‥‥」 「とは言っても、ナツキも相当疲労困憊(ひろうこんぱい)していたようね。ちょっと眠りに誘っただけで、これだもん」  ずっとトッティを探して町中を走り回り、そして先ほどの出来事。  ナツキもそうだが、ヒカル自身も相当疲れていた。  それにゲーム機が破壊されてしまい、身体だけではなく心の方も憔悴(しょうすい)していた。 「よいしょっと‥‥」  魔女は安らかな寝息を立てるナツキを背負い、そそくさと歩き出した。その後を飼い主であるナツキを案じてか、トッティが追いかけていく。 「あ、魔女(マギナ)さん。待って!」  ヒカルはトッティを警戒(けいかい)しつつ、その後を追いかけながらふと後ろを振り返り、ちょっとした大冒険と戦闘(せんとう)を繰り広げた“排水口”を見つめる。 「あそこ、一体なんだったんだろう」  そして魔女(マギナ)は横を歩くトッティと声をひそめて話していた。 「‥‥そう。何も覚えてないの。それじゃ仕方ないわね」  ヒカルと魔女は今回の騒動(そうどう)の謎を心に仕舞い、家路(いえじ)へと向ったのであった。
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