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②
「宿題をまったくしていない訳じゃないし‥‥。うん、大丈夫!」
ヒカルは現状の問題に対して最悪ではない。と、自分勝手な判断しつつ、夏休みの最後の一日を有意義に過ごすことにしたのである。
しかし、どこに行く宛のない逃亡劇。
いつもの習慣で携帯ゲーム機を持ち出してきたものの、携帯ゲーム機にインストールしているゲームは、この夏休み中でほとんどやり尽くしていた。
今さら独りで遊んだとしてもツマラナイものであるが対人プレイならば遊び尽くしたゲームでも相手がいるだけで楽しく遊べるものである。そこでヒカルは遊び相手を探しに、人が集まる場所へと向かった。
まず向った先はヒカルが通う小学校の近くにある“ラクガキ堂”という駄菓子屋兼文房具屋。
みんなの憩いの場であり、溜まり場である。
普段だったらヒカルのような子供たちで賑わう所なのだが、店の入り口にシャッターが降りていたのだった。
「あれ? 閉まっている‥‥」
どうやら臨時休業で閉店しており、当然のごとく子供たちの姿は無かった。
ヒカルは仕方なく別の場所へと向かうことにした。
次に向った場所は、ヒカルたちの遊び場となっている伊河自然公園。
ヒカルが暮らす市名を冠した、住宅街からやや外れた場所にある公園で、サッカーが出来るほどの大きな広場を有しており、隅にはブランコなどの遊具が設置されている。
一見、ただの運動場がある公園だが、どうして“自然”という名前が付けられているのかというと、かつてこの辺りには木々が生い茂る深い森が存在していたからだ。
陽の光さえ差し込まないほどの深い森だった事から“陽無の森”とも呼ばれていた。
その森は都市開発による森林伐採や、図書館などの公共施設の建設などの開拓によって、徐々にその姿を消していった。
だけど公園の隅に小さな範囲ではあるが、一部の原生林は手を付けられずに小さな森が残っている。その部分が在ったからこそ“自然”という名称が付けられたのである。
子供たちは名前の命名理由など露知らずに公園で遊んでいる。
子供が公園で遊ぶ‥‥それこそ“自然”な光景ではある。
ヒカルは真夏の太陽に照らされて、汗が滝のように流れ落ちながら公園に到着したものの、
「あれ? 誰もいないな‥‥」
公園にはヒカルの友達や知り合いどころか、まだ昼前の時間帯にも関わらず、人っ子一人も居なかったのだ。
こういう事は珍しかった。現にこの夏休み中、この公園に来れば必ず誰か人の姿はあった。
広い運動場にヒカルがポツーンとただ一人。
静かで何とも言えぬ不気味な雰囲気が漂っていた。
ヒカルは近くにあったベンチに座り、これからの事を考えた。
「どうしようかな‥‥」
このままベンチに座って、ゲームをしつつ誰かを待とうとしたが、八月末とはいえ、まだ太陽はサンサンと地面を熱して気温を上げており、日陰に居たとしても熱中症になってしまうだろう。
「そうだ。マルくんの家だったら遊べるかな?」
遊び友達のマルくんは、この公園の近くに住んでいた。
早速とマルくんの家へは公園の隅の森‥‥日無の森を通り抜けた方が早く着く。つまり近道が出来るのだ。
一刻も早く涼みたいと遊びたいという衝動に駆られ、迷わずにその道を選んだのだった。
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