42日目 魔女が現れた

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42日目 魔女が現れた

   ①  八月三十一日。  この日は義務教育(ぎむきょういく)を受けている大半の学生たちにとって、約四十日もあった夏休みの最終日だろう。  長きに(わた)った夏休みが終わろうとしているのに、夏休みの宿題は終わっておらず、今この時でも数多くの学生たちが夏休みの宿題に精を出して片付けようとしているのもしれない。  その中の一人、小学四年生の“風真光(カザマ ヒカル)”は朝早く起きて、夏休みの宿題に取り掛かっていた。  今日中に残っている宿題を終わらせなければならない。しかしヒカルの心の中では、既に(あきら)め風が吹き荒れていた。  それもそのはず。残っている宿題は―― ・夏休みの宿題の定番“夏休みの友”は三ページしか手をつけていない。 ・課題プリントは名前欄(なまえらん)に名前を書いただけ。 ・お馴染みの日記は三日分のみ。三日目の内容に至っては、その日の天気しか書かれていない。 ・夏休みの工作なんて、ホームセンターで買った工作キットを組み立てただけ。 ・読書感想文は本を読んでなければ、そもそも指定された本を買ってもいない。 ・必須課題(ひっすかだい)として()せられていた自由研究(じゆうけんきゅう)は当然のごとく全くのノータッチ。これが一番ヤバイ。  ――などと膨大(ぼうだい)だった。  そこでヒカルは、ある『選択』を決断することになった。 「もういいや!」  ヒカルは机の引き出しに封印していた携帯ゲーム機(封印期間:四時間)を手にして、家を飛び出したのである。  逃亡という、(はた)から見れば愚かな行為だが、当の本人(ヒカル)にとっては、最良の決断をしたと思っている。  逃げても何も解決しないというのにね。
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