能力を使って働いたらブラック企業になっちゃいました。(1)

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 ゆるりと揺れる電車の中は、人同士がひしめき合う押し競饅頭状態だった。  私は、手すりを力強く握ると、脚に力を入れ倒れないようにしながら、前後左右からの圧迫感に耐え降りる駅をひたすら待つのだった。  『ニューさいたま――、ニューさいたま――』  若い車掌の声で、あたしが降りる目的地がアナウンスされる。しばらくすると電車がゆっくりと停車する。  「みぎゅう……」  押しつぶされそうな圧迫感を感じながらも、あたしはなんとか踏ん張った。  そして動きが止まると、電車の扉が勢い良く開いていく。  それと同時に、塞き止められていた水が決壊するがごとく、乗車していた多くの人間が一斉に扉の外へ流れ込んでいった。  あたしは、例のごとく液化した猫のようになると、人の流れに身を任せ、するりと隙間を抜け外に出ることができた。  「はふぅ……」  ホームに足を着くと駆け足で、その場から離れ一呼吸して息を整える。    「はぁ……やっと降りられた……。この時間はやっぱり危険だなぁ……」  あたしは、混雑しているホームを後にし改札を抜けると、周りに落ち着ける場所がないか辺りを見渡す。  改札口を少し歩くと小さな広場が見えてくる。  広場には、いくつか空いたベンチを見つけることができた。     
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